2021年3月23日火曜日

石を積む|Michael Grab

ロックバランシング/マイケル•グラブ




マイケル・グラブは米コロラド州を拠点に活動するロック・バランシングアーチストです。

一見、不可能とも思えるようなバランス感覚で石を積み上げてゆきます。




このようにロック・バランシングとは石や岩を絶妙なバランスで積み上げることを言います。

古くはよくテレビ等で紹介されたBill Dan(ビル・ダン)、日本人では、石花ちとくなどが知られています。


Bill Dan

石花ちとく


どう見ても不可能にしか見えない数々のロックバランシング。

私も興味を持ち何度もチャレンジしたのですが、全く駄目でした。

消える人体|Emma Hack




風景に人体を融合させるボディペイント/Emma Hack


Emma Hack



エマ・ハック〈1972年〜〉はオーストラリア出身の女性アーティストです。メイクアップアーティストとしてスタートしました。

彼女の作品はトリックアートやボディペインティングと言った概念だけでは括ることができない魅力を持ちます。

彼女の作品の多くは背景に人物が融合して、まるで透明人間のようにその存在を消し去ってゆきます。

Emma Hack





2018年6月2日土曜日

川俣正と隈研吾

【川俣正と隈研吾の相違点】


川俣正



新国立競技場の設計で広く日本中に知られるようになった最近の隈研吾さんの建築を見て現代美術家の川俣正さんの作品?もしくは隈研吾さんとのコラボ?と思った人も少なくないのではないだろうか。 

だから巷に少しづつ増殖してきた川俣正さんのような隈研吾さんの建築を僕の周りの人も彼が関係したものだと確信していたくらいである。

 しかし、そもそも建築家と芸術家なので違いがあるのは当たり前で、両者には見かけは似ていても本質的な部分で大きな違いがあるように思う。 

川俣正さんの作品を装飾的に感じる人もいるかも知れないが、実際は建築物と言う形の隈研吾さんの方が装飾的なのではないだろうか。川俣正さんの作品が素材が建築に寄り添う寄生虫的構造なのに対して、隈研吾さんの方は現代建築に素材やスタイルを一体化させようとしてる点で全く異なる性質を持っているように思う。






川俣正

川俣正

川俣正



隈研吾

隈研吾

隈研吾

2017年7月14日金曜日

クリスト/Christo 〜風景を覆い隠すアーチスト

【地球を梱包するクリスト】







クリスト(Christo/1935年〜)はブルガリア生まれのアメリカ在住のアーチストで建物や海岸、橋、道、島などのさまざまなモノを布で包み込むことで知られますが、初期に比べて作品規模も大きくなりフランス人の妻、ジャンヌ=クロード(1935年〜2009年)と「クリスト&ジャンヌ=クロード」の名前で二人三脚で活動してきました。




1976年「ランニング フェンス」(カルフォルニア)
出典:https://www.kcet.org/


出典:http://anotherimg.dazedgroup.netdna-cdn.com







彼の作品は「包む」「梱包」等の言葉で言い表される(彼自身はそう言った言葉で括られれのは好まないようです)ことが多いのですが、正確には「覆い隠す」と言う表現の方が的確な気がします。勿論、その範疇に収まらない作品もあるのですが、初期のショーウィンドウに白い布を張って中を見えなくした作品は彼のそうしたコンセプトを象徴しているようにも思えます。





古くは裸の女性を透明なビニールで梱包する作品を制作していますが、クリストにとって対象は違っても、「包む」と言う行為はどれも衣服のようなものなのではないでしょうか。




彼の作品は非常に大規模ですが、驚くべくことにスポンサーや寄付などは一切受け付けず、すべてドローイング等を販売した数十億にのぼる自己資金やボランティアだけで制作しています。

それはスポンサーに左右されない作品の純粋性を保つことにも繋がっています。また彼のプロジェクト自体が旧ドイツ国会議事堂の梱包プロジェクトのように政治的な意味合いを持ってくるものも多く、最近ではトランプ政権に反対して25年越しで進めていた米コロラド州のアーカンソー川の川面の上を約9.5キロにわたって銀色の布で覆うプロジェクト「オーバー・ザ・リバー」を直前に中止しています。(トランプ氏が政権を担うこの国に利益をもたらすようなプロジェクトは行いたくないと言う趣旨のことを言っています。)





作品制作の許可を得る為に数多くの説明会や話し合いを国や役所、地域住民などに対して行うプロセスこそがプロジェクトの最も重要な部分てもあります。

プロジェクト自体にかける時間も数年から十数年かけたものがほとんどで、長いものでは25年以上かけて実現したプランもあります。またその実現までの期間とは対照的に作品の展示期間は数時間から2週間程度と短いものがほとんどです。

以前、日本でも1969年に上野公園を包み込むプロジェクトなどが計画されましたが、行政側の許可がおりず結局実現しませんでした。

しかし 、日本でも1991年に茨城県の水田に1,340本の青色の傘とカルフォルニアの砂漠に1,760本の黄色の傘を同時に設置すると言う「アンブレラ」プロジェクトが実現します。

一本の傘の直径は約8.7メートルという巨大なもので18日間設置されました。






現在計画されてるプロジェクトのうち、残念ながら前述したようにコロラド州の川の水面を覆うプロジェクトは中止されてしまいましたが、1977年から取り組んでいる砂漠に41万個のドラム缶を積み上げて巨大構造物をつくる「マスタバ、アラブ長国連邦のプロジェクト」は現在も交渉などが続けられてるとのことです。 是非、実現できるといいですね。













【クリスト作品】

>>>Christo & Jeanne-Claude



【関連書籍】






2017年7月12日水曜日

フルビオ・ボナビア/Fulvio Bonavia〜食品から作られたファッションアクセサリー

【食品とファッション】



フルビオ・ボナビア(Fulvio Bonavia)はイタリアの食品のイメージからファッションアクセサリーなどのアイテムを作るアーチスト、写真家です。

映画ポスターなどをミラノを拠点に手がけるグラフィックデザイナーとして活動してましたが、食品からバッグやアクセサリーなどを作った写真集「A Matter of Taste」(Hachette Australia、2008)で注目されました。


出典:https://www.yatzer.com/


出典:https://www.yatzer.com/








彼は食品から指輪や靴、ベルト、バッグ、ピアスなどファッションアクセサリーを作った写真だけでなく、服飾素材の布から食品イメージを作りあげると言う逆の過程の作品も制作していています。

また、アディダス、ソニー、ハイネケン、スウォッチ、アルファ・ロメオ、ジャガーなどのクライアントに広告写真も制作しています。


出典:http://www.webvolution.it/



また、食品だけでなく植物からファッションアクセサリーを作り出した作品も発表しています。


出典:http://www.fulviobonavia.com/

出典:http://www.fulviobonavia.com/








【関連書籍】




2017年7月11日火曜日

タラ・ドノヴァン/Tara Donovan〜日常品の集積が作り出すアート

【アンディ・ゴールズワージーと対をなすアーチスト/タラ・ドナヴァン】




出典:https://www.macfound.org/




タラ・ドノヴァン(Tara Donovan/1969年〜)はニューヨークの女性アーチストで身近な日常品を集積したインスタレーション(一般的に一時的に設置されるような展示方法を指します)の作品で知られています。




ストローを重ねて作られた作品
出典:https://www.artslant.com/



見方によると自然界の葉っぱや枝、石などを集積して作品にするスコットランドのアンディ・ゴールズワージーに似ている面がありますが、ゴールズワージーの対象が自然物なのに対して、彼女の場合はいわゆる現代社会の工業製品を使ったものがほとんどです。

ただ、どちらの作家も対象は違っても必要以上の手を加えず、素材の特性をとても良く生かした非常なシンプルな構造の作品になっていることが共通しています。

見慣れた日常品が集積することで全く違った質を持った表層に変えてゆく。

そんなところが彼女の作品の魅力でもあります。


プラッチックのコップで作られた作品(2003年)
出典:http://mymodernmet.com/


出典:http://mymodernmet.com/


虫ピンを集積させて作った立方体(2003年 一辺106.7cm)
出典:https://www.icaboston.org/


鉛筆を並べた作品(2005年)
出典:http://alexkittle.com/


紙を地層のように重ねた作品(2001年)
出典:http://alexkittle.com/wp-content/

ボタンを重ねた作品(2013年)
出典:http://www.artfixdaily.com/










コップとストロー作品の制作風景




【関連書籍】






2017年7月8日土曜日

エル・アナツイ/El Anatsui〜集積したアルミの蓋が作り出す表層

【エル・アナツイとマルタン・マルジェラの類似点】



出典:http://images.huffingtonpost.com


とても大きなのような質感に見えますが、近寄ってみると驚くことにアルミの缶や小さな瓶の蓋を潰して繋げ合せたものであることに驚かされます。



出典:http://www.eatmedaily.com/

出典:http://www.eatmedaily.com/

出典:https://hyperallergic.com/

出典:https://hyperallergic.com/wp-content/


エル・アナツイ(El Anatsui 1944年〜)はガーナ出身のナイジェリア在住の彫刻家で1990年以後、2度目の参加となる2007年のヴェネツィア・ビエンナーレで瓶の蓋を繋いで作られた巨大なタペストリー作品を出品して注目を集めました。

日本でも2010年に国立民俗学博物館で「エル・アナツイのアフリカ〜アートと文化をめぐる旅」と言う展覧会が開催され、翌2011年にも埼玉県立近代美術館で「彫刻家エル・アナツイのアフリカ」展が開催されています。

さて、美術ファッションの間では良くあることですが、アナツイの作品を見るとマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)の同じく瓶の蓋を繋ぎ合せて作った服が思い浮かびます。



マルタン・マルジェラ
出典:http://illustration.skr.jp/




両者に分野の違いはあっても共通する表現があるのは興味深いですね。




映像から見ると、もしかしたらそうなのかなとは思っていましたが、工房で沢山の人が制作してるようでアナツイ自身はプロデュース的な存在のような気がしますね。